若き日の漢詩
この夏は、全国ニュースで犬山の名前がよく出ていた。
記録的な大雨、国宝犬山城のシャチホコが落雷で破損したこと、そして再び数日前の大雨。西日本はまだ暑いが、関東など東日本は日照時間が少なく気温が低いままとのこと。
晴れたきのう、近くの前原周辺を2時間ほど歩いた。
入道雲は見えてはいても、夏らしい勢いはすでにない。栗の木は秋の準備を終え、青柿のなかには、僅かではあるが淡く色づき始めたものもあった。
犬山時代若き日の丈艸も私の住んでいる近所を歩いていたようで、前原、白雲寺(今は廃寺となり天道宮神明社)などを題材にした漢詩がある。
横書きはダメなことを知りつつ・・・丈艸の七言絶句をひとつ。
前 原 道 中
渉 過 松 濤 二 里 餘
雲 開 處 々 看 村 居
兒 焼 玉 黍 群 園 畝
山 老 笑 而 獨 荷 鉏
私なりの解釈。
松風の音を聞きながら歩いていると、家から二里ほどの前原あたりにやって来た。ちょうど雲が開け晴れてきたころ、村の家があちらこちらに見えてきた。子どもらが、畑の畝に群がって、トウモロコシ(玉黍)を焼いている。それを見守っていた年寄りが微笑みながら鋤を担いで帰るところだ。
転句、結句についてはあれこれ想像し、勝手な解釈になったかもしれない。玉黍を分け与えたのは山老で、子どもらが喜ぶ姿を見て彼もまた楽しかったのだろう。平凡だが、微笑ましい情景であり、まだ二本差しの丈艸ではあるけれど、心の裡ではこの山老のような生活を羨ましく思っているかのようだ。
参考
「前原道中」は、『俳人丈艸』や『丈艸伝記考説』(市橋鐸)に掲載されている。
↑前原地区から南を望む。尾張富士が少しだけ頭を見せている。
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