露草の青
庭のあまり陽の当たらない場所に午前中しか咲いていないし、背も低いので日頃は全くその存在に気づかない。午後、花は萎んでいたが、小さな蟻が苞の中を探検していた。万葉集にはツキクサ(月草)としてよく出てくるが、露草という名前はこの花によく似合っている。
露草の名は、「気孔」という言葉とセットになって私の記憶にある。
小学生のころだったか、理科の時間の観察に必要だというので、先生に指示されて露草を友達と必死になって探し回った覚えがある。葉の「気孔」を顕微鏡で見るためだった。
それにしても、この青は鮮やかである。鮮やかすぎて、誰かが試験管のなかで合成した色のような錯覚さえおぼえる。そう思うのは、私にとってこの世の青の色は、露草の花の色が基準になっているような気がするからである。
記憶に残っているはずもないのだが、ひょっとすると、道端の露草を指さしながら、母がまだ幼い私に「あおいろ」を教えてくれたのではないだろうか。
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