青龍山瑞泉寺 ②
『尾張名所図会』などに描かれた瑞泉寺堂宇の数々は、往事の隆盛ぶりを余すところなく伝えている。実はその絵の下に丈艸の詩が添えてあり、犬山城に近い犬山市文化資料館の傍らにもその詩を刻んだ石碑があるが、道行く人が足をとめることはほとんどない。
瑞 泉 寺
閑 歩 逍 遙 登 瑞 泉 閑歩して逍遙し 瑞泉に登る
宿 龍 池 上 得 詩 禅 宿龍池上 詩禅を得る
青 松 緑 竹 紅 塵 絶 青松緑竹 紅塵絶え
又 訪 髙 僧 入 扣 玄 又た髙僧を訪ね 扣玄に入る
「宿龍池」は寺の由来となった池であり、図会にも描かれている。寺の周囲は戦後の開発によって、もはや「紅塵」の絶えるような別天地とは言いがたいけれども、臨済宗専門道場として、今も立派な格式をもち、一歩寺域に踏み込めば塵界を忘れさせる。今は墓域となっているが、山腹からの眺望も格別である。
漫ろ歩きの途上立ち寄った寺で詩禅を得た彼は、また僧に会いたくなったのである。扣玄室(方丈)での話題は何であったろうか。ひょっとして彼が胸に抱える日頃の悩みだったのかもしれない。
なお『犬山視聞図会』の瑞泉寺の条には、「不倩華陰楮知自」を起句とする彼の詩も添えている。
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