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2018年7月 7日 (土)

女人髙野「室生寺」

P5280287_2ここ1週間、西日本を中心に記録的な大雨が降り続いている。
実家の様子も気になったので、きのう掃除がてら行った。母が家に残している小物を見ていたら、花台として使っていた小さな木片を見つけた(左)。写真はその左端にある焼印の部分だけを写したもので、「女人髙野 室生寺」とある。
奈良県宇陀市の室生寺は、今からちょうど20年前に台風7号で大きな被害を受けた。1998(平成10)年秋のことだった。強い風のために高さ60㍍の杉の巨木が五重塔に倒れかかり、檜皮葺の屋根五層とも無残に壊れてしまい、相輪の尖端も折れた。
また春日大社でも、倒れた大杉で東回廊の屋根の一部が破損しており、そのほかの奈良の文化財が各所で甚大な被害を受けた。

室生寺を初めて訪れたのは1980年代に入ってからだと思う。高さ16㍍ほどの小さな五重塔を母がとりわけ気に入っており、季節毎に家族で数回通った。それだけに台風被害のニュースには母も心を痛めていた。
幸いにも塔の本体は損傷を免れていたため、五重塔の修復は短期間で終わり、2000年夏には元の姿に戻った。その修復過程で再確認されたことは、従来言われていたように法隆寺五重塔に次ぐ日本で最も古い8世紀末前後の五重塔だったことだ。もちろん過去に修復は何度も行われているが、基本となる古材は当時のものが残っていたことから確認されたのであろう。
修復が終わった直後に訪れたときだと思うが、木片が勧進のために頒布されており、それが今手許にある花台だった。それは再建に利用できなかった塔の廃材なのか、それとも倒れた杉の木のものかはわからないけれども、母は再建をずいぶん喜び、これを大切に手許に置き使っていたのである。
母はもう訪れることができないが、代わりに梅雨が明けたら唐招提寺へ行く途中にでも久し振りに立ち寄ってみたいと思ったのである。

(修復に関する記録はNHKのアーカイブで今も見ることができる。→ここ

Photo                 室生寺:五重塔(2002年4月の撮影か?)

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