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2019年12月

2019年12月31日 (火)

カワセミ

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          木曽川左岸  14:30頃 28/12/2019

散歩中、小魚があちこちで飛び跳ねはじめると、すぐさま飛来。
カワセミ(翡翠)は夏の季語なのだが、その美しさは冬こそ、と思う。


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2019年12月24日 (火)

新蕎麦

人去つて冬至の夕日樹に煙り   桂信子

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           蓑虫庵(伊賀上野) 12/Dec./2019

蓑虫庵は芭蕉の門弟「服部土芳」の庵。
二年半前記事にした時(→★)は初夏五月の訪問だった。
今回も芭蕉ゆかりの場所をいくつか巡ったが、一緒に行った友人は上野市内で昼に食べた蕎麦がよほど気に入ったのか、昨日会ったときもその蕎麦の話ばかりであった。
それにしてもあんなに旨い蕎麦にこれまで出会ったことがない。奈良からの帰りにいつかまた立ち寄ってみたいとおもう。
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2019年12月 5日 (木)

鯖と雁(参)

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                   犬山成田山より(1/12/2019)

引用する。

「こんなところに立って何を見てゐたのだ」と、僕が問うた。
 石原は黙って池の方を指さした。岡田も僕も、灰色に濁った
夕の空氣を透かして、指さす方角を見た。其頃は根津に通ずる
古溝から、今三人の立ってゐる汀まで、一面に葦が茂ってゐた。
其葦の枯葉が池の中心に向って次第に疎になって、只枯蓮の襤
褸のやうな葉、海綿のやうな房が碁布せられ、葉や房の莖は、
種々の高さに折れて、それが鋭角に聳えて、景物に荒涼な趣を
添へてゐる。このbitume色の莖の間を縫って、黑ずんだ上に鈍
い反射を見せてゐる水の面を、十羽ばかりの雁が緩やかに往來
してゐる。中には停止して動かぬのもある。

           264~265頁 『雁』 森林太郎 大正4年 籾山書店

物語進行の途中、不意に現れた景物描写。
あらすじを追う読者の心の動きが一瞬止まる箇所かもしれない。葦の枯葉、枯蓮の襤褸(ぼろ)のような葉、それらの莖が折れて鋭角に聳えている荒涼とした池の夕景。そして雁。
この箇所について、実は荷風が冬枯れの不忍池の叙景として是非読んで欲しいと述べ、随筆『上野』のなかでも引用している。
「敗荷」(枯蓮)
は荷風の戯号でもある。
ひょっとしたら、この小説の顛末などより、鴎外はこの風景をこそ読者に思い描いて欲しかったのではないか。あるいは若き森林太郎自身が見た忘れがたい池の風景であったやもしれない。


あの日、二枚におろした鯖を食べてから、鴎外のこと、そして母方の遠祖が美濃に、父母ともに尾張に深い縁をもつ荷風のことを考えはじめている。

   小西湖上にて
枯蓮にちなむ男の散歩かな  荷風(明治44年詠)
           
*不忍池を当時の漢詩壇が小西湖と表した。
             
参考:
『雁』   森林太郎 大正4年 籾山書店
「上野」  永井荷風 『荷風全集』第16巻 岩波書店
「枯葉の記」 『荷風俳句集』  加藤郁乎編 岩波文庫

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2019年12月 4日 (水)

鯖と雁(弐)

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         犬山成田山より(1/12/2019)    

文庫を読み始めたが、なんとなく物足りない感じがして、古い単行本が閲覧できないかと国会図書館のデジタルコレクションを探してみたら、森林太郎著・大正4年籾山書店の初版本を見つけた。このほうが楽に読めた

読み終わってから気がついたことがある。
ひとつは「お玉」のこと。
この女性の印象はこれまで朧気なままだった。お玉の人物像や生い立ち、そして囲い者としての境遇などについては、高校生の僕はほとんど無関心だったようで、それらを記した物語の前半を斜め読みしていただけだった。今回読み直してみて、お玉という人物に少し近付けたような気がする。
もうひとつは後半の【弐拾弐】。ここで物語が大きく動く。
下宿で鯖の「未醤煮」(焼き鯖だったらよかったらしい)が夕飯に出たために食べることができず、僕は岡田を誘って散歩に出、二人が不忍池(小西湖)で石原と出会い、「雁」を仕留める話へと続く。岡田が投げた石が、そのつもりは無かったのに偶々一羽の雁に中ってしまった。これらの出来事がお玉と岡田の運命を変えてしまう。

気になるのは、僕と岡田が石原と出会ったときの不忍池の描写。
高校生のころから記憶にのこる「bitume色」というフランス語が出てくる。それまで人間臭い話が続いていたのに、不意に冬枯れの風景描写が挿まれている。
鴎外を生涯の師と仰いだ荷風がその描写をとくに好んだ箇所だ。枯れた葦、敗荷ばかりの池の風景。(参へ)

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2019年12月 3日 (火)

鯖と雁(壱)

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           瑞泉寺より(これは鴨の仲間か川鵜か?) 1/12/2019
            

日前、鯖を二枚におろして焼いた。千葉銚子沖の産。秋鯖か寒鯖か、とにかく旬には違いないだろう。焼き鯖を食べるのはほんとうに久しぶりのことだ。焼くつもりで二枚の身を手にしながら、一瞬頭の片隅に味噌煮の姿が浮かんだけれど、手間のかかることは止め、包丁をまな板に置いた。
焼いているあいだ、鯖が大の好物だった父、青魚をあまり受けつけなかった母のことを思い起こし、やがて連想は当然のように鴎外の小説『雁』にまで行き及び、物語の鍵となる「青魚の未醤煮」(さばのみそに)、不忍池(小西湖)で仕留められた一羽の「雁」のことを考え始めていた。小説の後半はちょうど今頃の季節のことだったにちがいない。
小説は映画化もされ、1953年の作品は高峰秀子が「お玉」役で、映画館のリバイバル上映かテレビだったのかは忘れたが、中学生のころに見た覚えがある。この小説を知るきっかけは映画が先で、文庫本の『雁』を読んだのは高校生になってからだった。

夕飯後、書棚から文庫を取り出して『雁』を開いた。(弐へ)

 

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2019年12月 2日 (月)

冬茜

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    冬茜 〈 犬山成田山(成田山名古屋別院)より 〉30/11/2019

このところ、ひとりで「夕焼鑑賞会」をしている。
時間があると、近くの成田山別院や瑞泉寺あたりへ出かける。写真右端の伊吹山はもう冠雪したらしいが、その秀麗な姿は晴れた朝でないとなかなか拝めない。

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