法隆寺九面観音立像
写真:東京国立博物館研究情報アーカイブズ
列品番号C-221 九面観音立像(模造)森川杜園作 明治25年
画像元:https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0082262
この国宝像の「本物」を法隆寺で初めて見たのは12歳のときだった。以来ときどき斑鳩へ行きたくなるのは、この観音像に逢いたいがためだが、その日少年の自分が拝眉したときの忘れがたい表情と再会できたことは、その後一度もなかったし、高名な写真家が写したものをどんなに見つめてもだめであった。
上の写真は東博に展示されている「模造」。この模造を初めて見たのは40歳代になってからだが、東京で逢えることがわかってからは、上野へ行くと必ず立ち寄って挨拶していた(最近は展示されているのだろうか?)。
奈良の森川杜園が、本物を室生寺へ一時的に移して模したもので、最晩年の作だという。自分にはどちらも全く同じものにしかみえず、杜園の熱誠と技量にただただ驚くばかりであり、実のところ「本物」が二体あるのだとさえ思っている。
この二体にはこれからも機会あるたびに挨拶するだろうが、12歳の自分が出逢ったときと同じ御眼と表情に再会できることは、やはりもう二度とないかもしれない。それでも、信心のひとつもない自分が今なお持仏のように大切に思い続けている仏像は、これを措いてほかにはないのである。
【法隆寺:九面観音立像(国宝)】
高さは37㎝余り(台座を含めた総高は48.5cm)で、A4用紙の対角線をほんの少し伸ばした程度の大きさしかない。8世紀初めに唐から渡ってきたものといわれ、白檀の一木作りは頭部の一部分を除いて、一切の継ぎ接ぎがなく、耳飾りも瓔珞も一木から掘りだされたものという。
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