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2022年2月

2022年2月23日 (水)

浅草田圃酉の町詣(1)

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初代歌川広重「浅草田圃酉の町詣
      (『名所江戸百景』)
出典:国立国会図書館 
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 前回の話からの連想、続きといえば続き。         


たか/″\とあはれは三の酉の月 久保田万太郎
この句は短編『三の酉』(S31 →青空文庫)の末尾に添えてある。話は短い芝居として公演されたりもする。「ぼく」と「おさわ」の軽妙で粋な会話だけですすむ話であるが、実は元々
おさわは吉原の引手茶屋生まれという設定である。搥田満文氏は「おさわのモデルは一人に限定しがたいが、柳橋や新橋より芸者としての格は上だった吉原への、万太郎の並々ならぬ思い入れがうかがえる作品」だと述べている(※)。空襲で亡くなったおあいさんのことも彼の念頭にあったと思う、話の結末からしても。

さて、きのう2月22日は、
にゃんにゃんにゃんの日。

今日2月23日は、
富士山の日。
ということで、万太郎の生まれ育った浅草、酉の市と猫と富士山と・・・
 
もう20年程前のこと、江戸東京博物館に行った折、復刻版の広重『名所江戸百景』の三枚を運良く手に入れた(或る意味仕事用だけど)。そのうちの一枚が「浅草田圃酉の町詣(あさくさたんぼとりのまちもうで)」だったが、この絵は学生時代の頃からどういうわけかとても気になっていた絵なのである。

手に入れた復刻版の著作権がどうなっているのかよくわからないので、ここに示すことは控え、自由に使える国会図書館の画像を使ったが、復刻版の色合いはこれよりもっと明るく鮮やかであり、本来はそうであったろうと思う。
そして書物などに印刷されたこの絵を見るだけでは多分わからないことが、復刻版を手に入れてから幾つもわかったのである。
(次回に続く)


参考(※下記の236頁)
〇『春泥・三の酉
(久保田万太郎 講談社文芸文庫 2002年)
〇「浅草田圃酉の町詣」(名所江戸百景)
  東京伝統木版画工芸協会 
  平成11年10月制作
  関岡裕介(彫師)・板倉秀雄(摺師)

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2022年2月14日 (月)

梅の句 (2)

梅の句(1) 承前 
久保田万太郎(1889~1963)の句といえば、「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」をはじめ、「パンにバタたっぷりつけて春惜しむ」や「時計屋の時計春の夜どれがほんと」などが歳時記によく取り上げられている。
去年上梓された『久保田万太郎俳句集』(岩波文庫)の解説で恩田侑布子が「万太郎は恋句の名手」だと書いていた。子規や虚子が主導した近代俳句の隆盛のなかで取り残されてしまった恋句や相聞の流れを、万太郎は大切に次の時代へ受け渡してくれたということだろう。

多くの不運もあったにせよ、彼の結婚生活や女性関係に世間は
厳しい目を向けていたことは事実だが、しかし彼が純粋に慕い憧れ、尊敬していたひともあったにちがいない。そのひとり「おあいさん」は、ひょっとすると幼い頃彼の母代わりであった祖母の面影と重なっていたのかもしれない。

昭和20年3月10日の東京大空襲で焼死した「おあいさん」とは、吉原の名妓いく代(西村あい)のことらしい。
三月十日の空襲の夜、この世を去りたるおあいさんのありし日のおもかげをしのぶ
」と前書のある昭和20年の悼句(『草の丈』)。

 花曇かるく一ぜん食べにけり

ありし日の彼女の忙しい芸妓生活を偲び、自分もかるく食事をとったということなのだろう。また『冬三日月』には昭和24年の句として、「三月十日」の前書きをつけておあいさんを追悼している。

 さくらもち供へたる手を合せけり

そしてあまりにもよく知られた「ひそかにしるす」と前書きされている句(昭和21年(『流寓抄』)。この人がおあいさんであるかどうか諸説あるらしいが、そんな穿鑿は野暮なことだ。作句者の波瀾に満ちた人生のことなどはひとまず忘れ、早梅の芳香に酔いながら、心の中で何度も小さく口ずさんでみるのである。

   ひそかにしるす。
 わが胸にすむ人ひとり冬の梅

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  自宅の部屋にて(2019年2月)

参考:
『久保田万太郎全句集』
(中央公論社 昭和53年再販)
『万太郎の一句』
(小澤實 ふらんす堂 2005年)
『久保田万太郎の俳句』
(成瀬櫻桃子 講談社文芸文庫 2021年)
『久保田万太郎俳句集』
(恩田侑布子 編 岩波文庫 2021年)

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2022年2月11日 (金)

再び明王山へ

ことし3回目の明王山。今回も迫間不動尊から登りましたが、次回は日本ラインうぬまの森からにしようかなと。
日陰道は雪が5センチぐらい残っている所もありました。
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伊吹山。午前中だったらもっと鮮やかにちがいない。右中央に岐阜城・金華山。
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御嶽山。噴煙の様子ははっきり確認できません。他にも能郷白山などの眺望は良かったが、中央アルプス、恵那山方面はほとんど雲に隠れていました。
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時間的にラッキーだったのか、望遠レンズを向けると、光る伊勢湾や浮かぶタンカー、名古屋港のキリンの形をしたガントリークレーンなどが見えました。距離約48㌔。
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登山口に戻った頃には汗だく。
があれば飛び込みた~い、そんな気持ちを託して・・・
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2022年2月 1日 (火)

梅の句 (1)

ことしは今日2月1日が旧暦の元日。週のおわりはもう立春。
昼過ぎから「うぬまの森」で二時間ほど登ったり歩いたりしながら過ごした。梅の便りが届き始めているので、近所ではどうかなと期待しながら夕刻「大縣神社」に立ち寄ってみたが、蕾は固いままだった。

夜、『久保田万太郎俳句集』(岩波文庫)を手に取リ、「梅」の句の幾つかをあらためて眺めていたが、そのことは次回にでも。
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膨らみはじめた「しだれ梅」 大縣神社(1/Feb./2022)

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