一茶の里
名月や乳房くはへて指さして 織本花嬌
名月をとつてくれろと泣子哉 小林一茶
この四月に上越(市振、親不知、上越市)、北信濃(信濃町、高山村、坂城町、上田市など)を訪れました。やはりひとり旅でしたが、前回記事五月の上越(出雲崎など)と違い、自家用車で広範囲を回りました。
今回はとくに一茶ゆかりの高山村を訪問した印象を記します。
先日藤井聡太さんが名人のタイトルをとった「藤井荘」(山田温泉)のある高山村は、実は小林一茶が北信濃の俳諧活動で重要な拠点にした所でした。その高山村に「一茶ゆかりの里 一茶館」があります。訪問した四月十二日はあいにくの空模様でしたが、入り口前にある満開のしだれ桜が風に揺れながら「どうぞどうぞ」と招き入れてくれました。
一茶館(長野県上高井郡高山村高井) 20230412
もちろん一茶の故郷柏原(信濃町)には「一茶記念館」があり、遺蹟や多数の句碑もあって、前日に何か所か立ち寄りました。でもそれらよりこの高山村の「一茶館」は、今もなぜか強く心に残っているのです。
地元のひとたちが大切に受け継いできた一茶の遺墨や『父の終焉記』をはじめとする資料の数々、金林喜多呂の愛らしい木目込人形による一茶生涯の展示、現代に至るまでの一茶研究の流れなど、質の高い、それでいてわかりやすく親しみを感じる記念館でした。
家族や親族のことで何かと不運、苦労の多かった柏原の一茶でしたが、頻繁に通ったここ高山村では伸び伸びと俳諧活動に専念できたようにみえます。村の門人久保田春耕の援助もあり、彼の父の離れ屋を提供され活動の拠点にしたそうです。その茅葺きの離れ屋は本館近くに解体・修繕・移築されており、建築物としても見応えがあるものでした。居心地がよくて一茶館ではずいぶん長い時間を過ごしました。
予定時間を大幅にこえてしまったため次の訪問地は翌日に回すことになりました。
ところで一茶が自身の俳圏拡大につとめたのは信州だけではありません。実は40歳を過ぎたあたりから本所深川に住みながら、江戸川・利根川周辺(流山、守谷、取手、成田、銚子など)や内房(富津、木更津など)へ巡回指導を行っています。
機会があれば、流山の「一茶双樹記念館」(秋元双樹屋敷)、冒頭句の織本花嬌(一茶憧れの女性俳人)が眠る富津の大乗寺などへも行ってみたいと思いました。
離れ屋(一茶館) 奥の小部屋の丸窓が印象的 20230412
信濃富士(黒姫山) 信濃町柏原「一茶記念館」前にて 20230411
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