英軍潜水艦の攻撃-その4-
≪出港後、多分2日目のことだったと思う。シグリ沖にさしかかったときのことであった。甲板で私が見張りをしていた時、明らかに魚雷と見える航跡が乗っていた機帆船に向かって突っ込んできたのである。幸い船の下を通り過ぎ、陸地にまで達して大爆発したのが確認できた。そしてさらにもう一発が、私の機帆船と約50㍍離れた航続の船との間を通過したのも見えたのである。多数の船の中で私の乗っていた機帆船だけが狙われていたとしか思えなかった。多分比較的大きな船だったからかも知れない。
そして翌日再び潜水艦からの攻撃があった。船団が航行する沖合500㍍の海上に突如潜水艦が浮上したのである。しかも甲板に数名の乗組員が出てきて砲身をこちらに向け、艦砲射撃の準備態勢に入っているのが双眼鏡でハッキリと確認できた。他の舟艇もこれに気付き、直ちに潜水艦への銃撃を開始した。大発の中には戦車砲を取り付けたものもあり、砲撃準備が行われた。
ちょうどこの時、友軍機が飛来しており、それを恐れてか潜水艦は艦砲射撃を中止して潜水を始めたのである。投下された爆雷は水中爆発したが、潜水艦に損害を与えたかどうかはわからなかった。後日、潜水艦は沈没したとの回報が航空隊からあった。≫
父の記述は半世紀も前の記憶に頼ったものである。はたしてどこまで正確なものか全く見当がつかなかった。戦友会誌を見ても、「シグリ沖」で潜水艦の攻撃があったこと、大発の「戦車砲」のことなどを書いている人はいるが、父の記述ほど詳細な回顧はなかった。今思うと、そもそも攻撃のあった場所「シグリ沖」が間違っていたため、調査は約2年ほど空回りしてしまったのである。そして潜水艦は本当に沈没したのだろうかという疑問もあった。
こうした限られた資料をもとに、私が最初に調べ始めたのは、この潜水艦についてであった。
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