手作り歌集
父の遺品のなかに手作りの「歌集」があり、リババレー作業隊にいた頃に作成したものと思われる。上演された劇などの劇中歌もあり、隊員たちが一緒に歌うためにつくったらしい。使われた用紙は軍用の通信用紙の余り物20枚ほどを使い、60曲の歌詞が記されていた(クリックすると拡大できます)。
ほとんどは戦前の歌謡曲だが、やはり内地帰還を待ち侘びる心情に訴える歌が多い。南の島、椰子の葉、南十字星、汐路、故郷などの言葉に、苦しかった戦いの日々を偲び、望郷の思いを募らせたのだろう。
参考までに、隊内でつくられた『リバ(ヴァ)バレー作業隊の歌』を記しておく。隊員たちの当時の心情が、この歌詞の中にすべて織り込まれているように思う。
『リババレー演芸史』には三番までしか掲載されていなかったが、父の歌集には五番まであった。両者で歌詞の語句などに若干の相違はあるが、父の歌集にあるものを記した(なお、部分的に判別しがたい文字があり、文脈に合うよう補った)。
作詞は室坂外之、作曲は出戸位待。
リヴァバレー作業隊の歌
一 緑の光 若き土 映える希望の黄金雲
集ふ七千 いざ共に 新生日本へ轟く歩調
いのち高鳴る朝明けだ 我等リヴァバレー作業隊
二 灼けつく太陽 玉の汗 街にオフィスに工場に
打つぞ此の鍬ハンマーに 湧き立つ気魄よ故郷迄響け
示す男子の心意気 我等リヴァバレー作業隊
三 嵐も何んぞ 打堪へむ 胸にあの日の御大詔
昨日を捨て 新しい世紀の象徴(しるし)を今先立てて
国を挙げての総だすき 我等リヴァバレー作業隊
四 南の嵐 椰子の葉よ 燃ゆる夕陽の地平線
夕餉を楽しく語らえば 夢見る故郷あの山河
空に招くか十字星 我等リヴァバレー作業隊
五 微笑む海よ あかね雲 薫る故郷の花を乗せて
やがて来る来る希望船 鍛へ乗り切れ腕組み交わし
晴の前途の陽に謳へ 我等リヴァバレー作業隊
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