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2017年9月27日 (水)

甲府空襲と諸星廣夫氏のこと

 追記:2020年12月21日
この記事を書いてから3年以上経過した。文末に予告のかたちで書いた著作について、すでに発刊されているので記しておく。
 『甲府盆地は火の海だったー甲府空襲の真相を探る』(山梨ふるさと文庫)2018年

Photo_2岐阜空襲の回想記を書いたRowland E. Ball氏が、甲府空襲の体験者と交流していたことを知ったのは、つい最近のことであった。Ball氏は、岐阜空襲3日前の7月6日の甲府空襲にも従事していたのである。

航空評論家で元日航機長の諸星廣夫氏は、自身が甲府空襲の体験者であり、そのときご両親を亡くされている。甲府空襲の実態を後の世代に語り継ぐために各地で講演もされておられるが、その概要は『元日航機長が語る空爆の真相』(山梨平和ミュージアム発行のブックレット 2007年)にまとめられている。

この冊子を読むと、甲府空襲の実態について、ご自身の空襲体験に加え空爆した側も含めて把握しようと努められたことがわかる。パイロットとしての視点と関心によるものであろう。
諸星氏がメールなどで交流した搭乗員のひとりがBall氏であり、それが縁で、Ball氏は空襲を扱ったNHKの番組でもインタビューに応じており、空爆の体験を語っている。しかし残念ながら甲府を空爆したときのことについては、とくに記憶に残っておらず、Ball氏が岐阜空襲で生死を分ける体験をしたときのような強い印象は語られなかったようだ。だが諸星氏が、敵である米兵のことや米軍の作戦内容も含めて空襲の実態を総合的に把握しようと努力されていることは、単なる空襲体験記以上の貴重な研究となっている。
元兵士の戦場体験や民間人の空襲体験などを受け継ぎ、そうした体験をどのように次世代に受け渡すかは大切な我々の課題となっている。そのための幾つかの示唆を、諸星氏のブックレットから学ぶことができたと思う。

なおこの夏の報道によると、諸星氏はこれまでの空襲に関する調査・研究をまとめた著作を、来年の夏までの完成をめざして準備されているとのことである。

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