日記・コラム

2025年7月 8日 (火)

ソルを聴く(1)

Fernando Sor

Study in D Major Op.35. No.17 

演奏:Borbála Seres

Fernand Sor(1778-1839 Spain)は自分にとって今もなお大切なひとになっています。
10代の終わり頃の或る日、夕暮れ時に自分の部屋でギターを練習していると、台所に立っていた母に「今の曲もう一度」と請われたのがソルのこの曲でした。

Borbála Seres の演奏を聴いていると、左手は有能な職人、右手は芸術家ともいわれるギター演奏のお手本を見るようです。
細かな消音のテクニックやしなやかな指裁きがこの曲の美しさを引き立て、あらためてソルの心に触れた気がします。明日9日は母の誕生日。亡き母に聞かせてみたい演奏です。

それにしてもガット弦を指頭法で弾いていたといわれるソル自身の奏でる音色はどんなものだったのでしょうね。

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2025年5月19日 (月)

自衛隊機の墜落

この記事は「海の陸兵」と重複します。

ずいぶん前に「米軍機墜落」の遠い記憶を辿ったことがありましたが、当時の父がずぶ濡れのまま玄関先に立っていたときの、黒い影を今も決して忘れることはありません。

つい先日、14日(水)の午後のこと。

そろそろ図書館を出ようと思った時、いつもより人がとても少ないことに何となく「嫌な感じ」を覚えたのです。館内にいたときから、外では度々消防・救急車がサイレンを鳴らして走っていました。
帰宅時、車の中でニュースを聞くと、「入鹿池に自衛隊機墜落」との報。そのとき頭のなかの一番の心配事は自宅の安否でした。「入鹿池」近辺は自分にとって生活圏の一部
自宅に戻ると、夕闇迫る鉛色の空を自衛隊の救難ヘリや捜索機などが低空を忙しなく飛び交っていて、
身体全体を上から押しつけてくるようなプロペラの音だけが住宅地に響き渡っていました。

振り返れば、2022年から昨年までの3年間だけでも自衛隊機墜落によって亡くなられた方は、すでに20名にのぼっているのです。(今回の事故機は1989年製)

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 小牧基地航空救難団所属(推定) 救難ヘリコプターUH-60J
                2025/5/16/17:30(自宅)

 

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2025年3月30日 (日)

バッハを聴く(2)

秋風に箏をよこたふ戦経て 橋本多佳子 昭和25年

橋本多佳子の祖父山谷清風は山田流箏曲の検校で、彼女も幼い頃から箏を習っていたそうです。句帳には「祖父の琴今はなし」との前書があったと娘の美代子は記しています(※)
子どもの頃、友人や知人の家に寄るとかなりの割合で箏を目にすることがありましたし、学校には必ず音楽室や作法室などにも置いてあった記憶がありますが、最近は一般家庭でお目にかかることは難しくなりました。
※『橋本多佳子句集』
    註 橋本美代子 北九州市立文学館文庫 平成22年


今回はバッハの「シャコンヌ」(無伴奏バイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調〈 BWV1004〉の終章)。
バイオリンではなく、ここでは木村麻耶による「二十五絃箏」の演奏を聴きます。


箏は、「弾く」の原義を想起すれば、チェンバロやリュートの響きを連想させます。最初に聴いたときは、この演奏・奏法に至るまでにあったであろう数々の困難ばかりがどうしても頭を過ってしまい、曲を聴く余裕さえありませんでしたが、2度3度と聴くうちにそうした雑念もなくなり、バッハの旋律に酔うことができるようになりました。

次はピアノ(ブゾーニ)によるシャコンヌ。
ロシアのポリーナ・オセチンスカヤ(1975~)の演奏。
これも最初は少し戸惑いましたが、その情熱的でダイナミックな演奏によって、ジャズの風景すら垣間見えてきます。



おしまいは、やはりギターで。ジョン・フィーリーの演奏。10代の終わり頃、セゴビアのレコードで初めてシャコンヌを聴いてからすぐ楽譜を手に入れたものの、こんなに長い曲の暗譜は無理だと分かっていながら、毎日音符を追った思い出があります。
それ以後、この曲はバッハのなかでは一番多く聴いたのではないかと思っています。

繰り返す緊張と弛緩、天と地を往還する旋律の煌めき。
恰も「信と知」を叙述する一篇の宗教詩の如く、心の裡の最も深いところを常に揺さ振ります。



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2025年3月21日 (金)

バッハを聴く(1)

バッハではないですが、最初に 16~17世紀に活躍した John Dowland の曲を埋め込みます。彼の曲はむかし自分の持っていたギター用の楽譜にもかなりたくさん載っていました。
楽曲は、「Now, O Now I Needs Must Part」。
歌は Les Canards Chantants 、リュートは Jacob Heringman で「7コースのルネサンス・リュート」を弾いています。
旋律は或る懐かしさを呼び起こし心を和ませ、一度聞くと忘れられなくなります。詩は「別離」がテーマの悲しみに満ちたものなのに。

このところバッハの曲を聴くことが多くなりました。よく言われるように、音楽は「バッハに始まりバッハに終わる」とか。はたして自分にとっての音楽は「何に終わる」のでしょうか。

大昔ギターを少しやっていたころ、ギター用に編曲されたリュート曲集やバッハ(J.S.Bach)の楽譜も幾つか手許にあり、それらはなぜか現代のギター曲よりとても心惹かれた記憶があります。
「この曲は、もし本来のリュートで弾いたらどんな音色なのだろう」という当時の願望は簡単には叶えられなかったけれど、時折ラジオ番組でリュート曲の演奏があると急いで録音した覚えがあります。ところがもうギターを手にすることもない今になって、リュート演奏の動画などを気軽に視聴することができる時代に・・・噫!

そこでバッハのリュート曲を。
代表曲「リュート組曲 ホ長調 BWV1006a
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調(BWV1006)」をリュート用に編曲したものですね。

最初は聞き慣れたギターでの演奏。
自分にとってのベストは John Williamas の演奏(→★)なのですが、埋め込み制限があるようです。
そこで今注目の岡本拓也氏の演奏を聴くことにしましょう。
最近自身のチャンネルにupされたばかりだとか。
小型の「19世紀ギター」を使っているようですが、そのためか何となく先祖のリュートらしき音色が聞こえてきます。


では同じ組曲をリュートで。
Evangelina Mascardi が「13コースのバロック・リュート」で弾いています。
とくに 8:52 からの Gavotte en Rondeau は最も好きな曲なので、何度も聴いてしまいました。ギター演奏では聴き取れなかった音も、遙か遠くで微かに漂っているような気がします。

次回は「シャコンヌ」。しかもあの楽器で(゚-゚)

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2024年8月14日 (水)

♪Omens Of Love

夕立の匂ひに恋の予感して  脇本聡美

盛夏! 今、中高の吹奏楽はコンクールの真っ最中。
この季節の数々の自分の想い出とともにある曲は、

「オーメンズ・オブ・ラブ」 
作曲:和泉宏隆、編曲:真島俊夫(1986年)

吹奏楽に関わったことのあるひとなら忘れがたい曲のひとつでしょうし、これを演奏したいがために吹奏楽部に入部したというひとも多かったようです。
原曲は THE SQUARE(現 T-SQUARE)の 名曲 Omens of Love(作曲 和泉宏隆 1985年)なのですが、これを吹奏楽用に真島俊夫が編曲したことによって、「宝島
同様にこれまで多くのひとに愛されてきました。

真島
の追悼演奏会での演奏がありましたので埋め込みます。
演奏:川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団 2016年



甲子園球場でも各校ブラバンの応援でよく聞きますね。吹奏楽の定番曲なので、例えば定期演奏会のオープニング曲に使われたりすることも
多いようです。
曲名をたいていは「恋の予感」と訳しています。けれどももっと広く深い意味が込められている曲のような気もするのです。


編曲によって原曲は一層劇的な展開を含むものとなり、しかも軽快で疾走感のあるメロディーは、何かが始まりそうな omens (兆し・予感・期待感)を抱かせ、そしてただそれだけが(!)いつまでもどこまでも続いていくのです。
この心の高まりは曲の想い出と結びついて、真夏の季節に相応しいとずっと思っていました。

けれども数日前、ほんの少しだけテンポを遅くして丁寧に旋律だけを胸の中でなぞってみたのです。するとなぜか急に別の情景へと引き込まれるようなような気がしてきたのです(次第に日が短くなっているせいか、年のせいか?)。

そこで作曲者和泉宏隆(1958-2021)自身の最晩年(2021年)のピアノ演奏を聴いてみたところ、今までイメージのなかにあった真夏ではなく晩夏の、あるいは行合の空を見上げたときのような季節感へ誘われたのです。或る懐かしさも伴って。

思い込みかもしれないけれども、Omens Of Love という曲を彼が生み出したときの曲想やその指運びをこの映像で見る思いがしてなりません。

次回は、いつになるかわからないけれど、この曲が生まれる前年(1984)に世に出た、もうひとつの「恋の予感」について触れてみたい。

 

 

 

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2024年4月 7日 (日)

いのち一ぱい

櫻ばないのち一ぱいに咲くからに 
     生命をかけてわが眺めたり
 
         岡本かの子『浴身』(大正14年)所収

薄曇り。微かに伊吹山の山容。
本堂東の山桜はすでに散りつつある。
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 犬山成田山より犬山城遠望 20240407 13:50 f/27  1/30秒  ISO-200

久しぶりに聴く。
車で遠出するとき、気合いを入れるため最初に流す。
@ketsume_officialより

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2023年12月24日 (日)

タイトルバナー(3)

タイトルバナー3回目。
これらは翌2021年のブログに載せたものの再掲。
すべてに俳句を添えてあります。

2020年に家の建て替えをしました。
最初の4枚の「空蝉」はその年の7月下旬に我が家の門塀にしがみついていたものです。家の建て替えで、以前庭だった所がほぼ駐車場になり、樹木も大部分を処分したので、きっと地下に潜っていた蝉の幼虫たちはどこから地上に出ていいのかずいぶん迷ったすえ、門塀付近にわずかに残る土の部分から這い上がってきたのではないかと思います。
脱皮できたのは、親が産んでくれた木ではなく門塀でした。
で、こうした蝉は昨年にはいなかったのですが、実は今年2023年の夏に2匹も門塀で脱皮していました。たぶん来年以降もみられると思います。

クリックして拡大してください。
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2023年12月19日 (火)

タイトルバナー (2)

タイトルバナー2回目。
これは2年前の記事と同じ。

2020~21年にかけてのもの。5~8月の日常風景です。
6番目の通称「ロボット水門」は、岐阜公園の側にありますが、その原型は昭和初期に作られたものらしく、岐阜県近代化遺産のひとつになっているようです。

クリックして拡大してください。
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2023年12月18日 (月)

タイトルバナー (1)

2年ほど前、このブログのタイトルバナーとして使った写真をいくつかまとめて載せたことがありました。
このブログは自分の撮った写真のアルバムでもあると思っているので、とくにタイトルバナーはかなり時間を割いて編集しています。けれどスマホ版では残念ながらタイトルバナーは全く無視されます。できればタブレットかPCで。

そんなわけで、これまでのタイトルバナーを数回に分けて載せておきます。次回からは2年前にまとめて載せていたものも再掲しておきます。同じような記事や写真をもう一度載せることについて、少し迷いましたがどうかご容赦を。


今回は主に2021年のブログに載せたタイトルバナーです。

2003年から07年ぐらいまで八重山諸島に何度か行きました。幾つかの所用があったからで、観光目的ではなかったのですが、それでも時間の許す限り島々を見て回りました。8月だけでなく春や秋にも訪れたことがありました。当時撮った写真が眠ったままになっていたので、タイトルバナー用に編集し保存しておくことにしました。
とくに波照間島の北側にあるニシ浜は、波の音以外全く聞こえない世界なので、心がどんどん内へ内へと深いところへ降りてゆくような不思議な時間を経験しました。2枚目は地元の方らしいのですが、海を眺める父と子の姿を今も思い出します(2006年)。5枚目は波照間島の南側、有人の島としては日本最南端の場所になります。6~7枚目は石垣島です。

できればクリックして拡大してください。
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2023年9月 5日 (火)

夏の名残の薔薇🌹

Thomas
 Graham Thomas 1983  (花フェスタ記念公園 20200702)

なんとなく秋の気配を感じ、あの曲を聴きたくなった。
The Last Rose of Summer🌹
アイルランドの歌曲だけど、日本では「庭の千草」として知られている。

原曲の詩(Thomas Moore、1779~1852)を読んでいると切なく哀しく辛い気持ちになるが、とくに詩の結びを何度も読み返していると、不思議なことに心が前向きになる力を感じてくる。美しい言葉ゆえか、メロディーによるものか、うまく言葉には表せないが。

So soon may I follow,
When friendships decay,
And from Love's shining circle
The gems drop away!
When true hearts lie withered,
And fond ones are flown,
Oh! Who would inhabit
This bleak world alone?.

注:スマホの方は横位置にしてください
歌詞付きの映像があったので埋め込む。
歌:森野美咲(ウィーン在住)→★

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